看護必要度を用いたナースの忙しさのまとめ的エントリー

このblogの読者さんから以下の質問をいただきました。

はじめまして。病棟看護師の業務量の可視化(忙しさ度合の指標)を探していたらこちらにたどり着きました。
私は地方にある病院で事務・診療情報管理士をしています。当院でも電子カルテ導入後10年くらい経ち、データの2次利用は課題です。
看護師の業務量(忙しさ)を可視化するのにこちらのブログ記事は参考になります。よろしければアドバイス願います。
きちっと図るにはブログ主様の病院とおなじように細かいデータを準備する必要があるのでしょうが、大まかにだけでよい場合はどういう方法があるでしょうか。
ブログ記事で気になったところに「結局つもるところ、看護師の忙しさの要因は看護師数と患者数によって左右されると考える。」のような記事がありました。
ざっくりこの考えでよいとして、これ以外に「人員配置では測れない忙しさの要因」を図るデータとして何を参考にされているのかご教示いただけると幸いです。
まずは当院の病棟間の比較に使えないかと考えております。
看護師一人あたりの業務量、そしてその業務量は病棟の稼働額とどういう関係にあるのか。(おそらく相関ないのでしょうが。。)

折角の機会なので、ウチの病院がどういう尺度で「ナースの忙しさ」を定量化しているのか改めてエントリーしてみます。
まず、元となるデータは毎日の「看護必要度評価」と勤務割システムからのナース勤務情報です。
急性期病院であれば入院基本料算定のために必要度評価は必須です。そして、今の時代勤務割システムを使用していない病院も少ないでしょう。様式9を作るの大変ですから。
で、結論から言うと

     看護師の延べ勤務時間

                                                                      • -

看護必要度評価から推定される必要看護師数

 
で、求められる(と推定される)ケア量に対して、それを提供する資源(看護師数)が充足しているかどうかがわかり、求められているケアを少人数で提供していると仮定するならばそれは「ナースの忙しさ」と考える事ができると言うわけです。
 
これは、求められているケアを提供しない看護師は居ないという性善説に基づいています。そうしないと定量化は不可能ですし、思考のロジックとしては「看護を必要とする患者さまがまず存在し、次にそれらの患者さまへのケアを漏れ無く提供するだけのマンパワーを供給する」ことが前提なわけです。
さて、ここで問題となるのが看護必要度評価から如何に「必要とされているケア量を推定するか」です。
単純に看護必要度の点数を合計しただけでは実際の業務量に見合いません。なぜなら看護必要度のれ点数に比例(一次関数)してケア量が増えるのではなく、看護必要度が高い(=重症)な患者さまのほうがよりケアを必要とする二次関数的な曲線を描くと思います。

なので、何かしらの指数をかける方法もありますが、どのように指数を決定するかEvidenceがありません。
そこで「看護必要度」の本を書かれている筒井孝子さんが雑誌:看護展望2008-4(vol.33 no.5-457)でひとつの考え方を提唱してくれています。
それは、看護必要度から患者さまを5つのレベルに分類し、それぞれに必要とするケア量(人数換算)を算出しようということ。
例を挙げると、看護必要度レベル分類が最も低いレベル1の患者さまは0.1人日(わかりやすく言うと10:1=看護師1人あたり10人は受け持てるでしょう)、逆に最もレベルの高いレベル5の患者さまは0.67(看護師2人で患者さま3人でしょう)というようにレベルの高い群に重みをつけるのです。(出典:看護 2007.10(vol.59 no12)「看護の質の管理における看護必要度データの活用」筒井孝子)
これにより、看護必要度を基にしたレベル分類により、必要とされるケア量が看護師換算で算出できます。
 
じゃあ後は上述の式のとおり実際に勤務した勤務時間の延べ数を、必要ケア量の合計で割ってあげれば必要とされているケア量に対して十分な看護師がいるかどうかが分かり、それは先に述べた「看護を必要とする患者さまがまず存在し、次にそれらの患者さまへのケアを漏れ無く提供する」という前提ロジックから考えると「ナース1人あたりの忙しさ」として定量化することができるということです。
 
が、筒井さんのこの考え方がケア量の推定として適切かどうかは学会でも疑問は呈されています。ですが、私は「ある一つのものさしで計ること」が出来るという点において非常に有効であると考えています。正確に反映しているかどうかは小さな問題です。実際に看護必要度B項目が高い患者さまほどレベルが高く出る傾向は肌で感じていますが、そんなことを気にしていたら何も出来ないのですよ。
kgsm大学のut先生は、「DPC病名からケア量の推定が可能ではないか」と数年前の学会で発表していらっしゃいました。これもありだと思います。十分なTimeStudyを元にDPCコードとの相関が示せるのであれば。(その後どうなったか最近の演題では聞きませんが・・・)
大事なのは「あるものさしで計ること」によって、病棟ごとの比較やひいては他病院との比較も可能であるということでなのです。
「声の大きい愚痴っぽい師長さんの病棟は忙しそうだ」とか、「病床利用率が高い病棟以外は忙しくない」などといった感覚的な尺度じゃダメなんですよ。(笑)
というか、「ウチの病棟だけが忙しい」と思いがちな師長さんに「隣の芝も青くない」ということを提示してあげること。そこからお互いに協力し合う気風が生まれることが、看護部全体として良い看護を提供できる病院になっていく小さな一つの種なのではないかと考えております。
なんだか書きなぐってしまって支離滅裂かもしれませんが、一旦アップロードしてみます。時間が空いたら推敲する予定です。 
あ、ちなみに業務量と稼動額の調査はしていません。ていうか、やりたくありません。看護は心です。心はお金換算したくないのが本音です。
 

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