医療情報学会3

今日は中弛みの日。これといったセッションもなく、うろうろしてました。
午前中のセッションで興味を惹かれたのは、15前後の病院の共同研究で「患者が望むアクセス制限」についてのアンケート結果の発表。
病名(病状)、生年月日(基礎情報)、病歴、家族歴のそれぞれについて、医師・看護師・コメディカル・事務の各職員ごとに、「担当(主治医・プライマリナース)」「診療に関連する職員」「診療に関連のない職員」のどこまでなら知られてよいか、またどこからは知られてほいくないかというマトリクスで分析していました。
当たり前だけど、診療に関係ない職員に閲覧されることはほぼ8割の人がたとえ医師であっても「見られたくない」と答えている。
いままでは、職員の情報共有、とりわけチーム医療に寄与するため、「閲覧」に関しては特に制限を設けていない病院が多い現状の中で、患者さまへの関わり方によってアクセスコントロールをする必要があることを示唆していて、非常に興味深かった。
一つの意見として、「カルテを開いたときに閲覧履歴が表示されるようにすれば、年金台帳のような興味本位でのカルテの閲覧に対する抑止力は働くだろう。
さまざまな解決方法は考えられるけど、その問題提起としてとてもよかったと思います。
 
午前中のもう一つのセッションで、ユーザーメードのシステム(電子カルテSS-MIXと連携したFileMakerのDBのようなもの)の話を聞いていた。
論点は

  • 診療科や部門ごとに研究に必要な情報を蓄積するためのデータベースを作っている。その際に患者属性等すべて手打ちの状態だ。これをなんとかしたい
  • そこで、SS-MIXからの情報を引っ張ってきてFileMakerで使えるようにしました。えへん

でした。
もちろん言ってることはよくわかるんだけど、それって果たして本当にいいの?本質的な解決方法なの?って私は思っている。
部門にデータベースがあること自体が問題である。管理責任は誰にあるのか非常に不明確になるのである。
電子カルテにデータがないから自分たちで作ってる」という理屈は至極もっともだが、本質的な解決方法は「電子カルテにデータを入れること」「電子カルテに入れれば医療情報部がデータが抽出まで面倒をみる」ということだと思う。
これについて、生育医療センターの山野辺先生が同じ発言をしておられた。やはりあの先生とは気が合うwww
医療情報学会にもときたま変なことをいう人がいるけど、山野辺先生の発言にはいつも同意させられる。尊敬できる先人であり、私もプチ山野辺になりたいものだ。
 
それと、東京大学病院が電子カルテ化した時の患者制限の状況(病院側は「各科で適宜制限をしなさい」というスタンスだった)を調査した結果の発表ありました。

  • 1週目:15%↓
  • 2週目:5%↓
  • 3週目:0%に回復(=もとに戻った)

これは参考データとして使いたい。科別の外来診療単価と掛け合わせて、外来収益ダウンの予測数値を出したい。一緒に聞いた部下に指示したので、水曜日に出社したらできているかな。楽しみ。
ただ、気になるのは、稼働して5カ月経過した現在でも、平均外来診療時間が1(分/人)延びているんだそうだ。外来患者1,000人なら1,000分だ。これは検討しなければならない事実。
 
あと、午後は大会長の講演+企画セッションオンリーだったので、仕方なくそれを聞いてました。
が、医療情報学とは全く関係がないのだけど、尾道医師会による尾道方式退院前緩和ケアカンファレンス・デモプレゼンテーションを聞くことができました。
本邦初、というか世界初(って言ってた)の尾道方式の在宅緩和ケアへの担当者会議(もちろん家族も同席)のカンファレンスの様子、そして、実際に介入した患者さまの紹介、例えば急性期病院に在宅を担当する医師の退院前の診察、在宅に戻った患者さまの急性期病院の医師(皮膚科医や歯科医)の往診の様子など。そして、書ききれないが、多職種による介入の実際。
とにかく在宅にかける熱い思いがひしひしと伝わってきた。
介入してもらった故人の奥さんと妹さんの感謝の気持ちを聞いた時には胸が熱くなった。
僕も北信州でがん診療と緩和ケアに携わる人のコミュニケーション向上の技術的なお手伝いをしているけど、なかなかうまくいかない現状がある。
尾道市医師会の医師会長さんに聞きたかったのは、先生が「大事だ」と言っていた以下の2点、

  • コミュニケーションの向上
  • 哲学の共有

について、はたしてICTはどこまで役に立てるのだろうということ。
質問時間がなくて聞けなかったのは残念だけど、この先も考え続けて行きたいと思う。
 
夜は、奇しくもも同時期に電子カルテを更新する近隣の病院のシステム担当者の方と落ち合って、お好み焼きを食べながらの情報交換。
話は尽きることなく、夜は更けていきました。とても有意義な時間だったと思います。やはり、担当者同士の情報交換というのは非常に大事だと思いを新たにしました。
結局、まったく中弛みすることのない1日でした。うむ。