看護部長退任

春は別れの季節です。
悲しい別れと、新たな出会いが交錯する、桜舞い散る季節です。

本日、定年を2年延長された当院の看護部長が退職されました。
お別れの挨拶に行こうと思ったけど、敢えて行きませんでした。会っても、僕の感謝の気持ちを全部は伝えられないだろうと思ったから。
部長にはたくさんのことを教わりました。
挙げれば暇(いとま)がないので、掻い摘んで。
当院は10年ほど前にそれまで使用していたオーダリングシステムと、なんちゃって看護支援システムを入れ替えました。
当時、看護支援システムを導入する病院はほとんどなかった。
なのに、当時は副看護部長だった看護部長が「看護支援システムを入れましょう」と言った。
その時から僕の人生は変わったと行っても過言ではないと思っています。
システムを使う側はもちろん、作る側(私たち)も「看護支援システムってなんや??」状態のなかで手探りのシステム作りが始まりました。
当時のコンセプトは、医師は紙カルテ(クラークの代行入力)でそれ以外をシステムに統合というものだったので、私の労力の多くは看護に向けられました。
でも、当時の私にはわからないことばかり。SOAPの意味することすら知らなかったのですから。
もうねー、看護の「か」の字も知らないシステム屋が看護を理解しようとしても全くわからなかったです。私なりに夜な夜な看護部前の会議室で看護に関する参考書を読んで勉強はしました。でもわからないことばかり。だけど、そんな姿を看護部長は見てくれていたのでしょうね。私の姿を見かけては「何してんの〜?」「んー調べごとです。看護はわからないことばかりですから」の繰り返しみたいな毎日ですた。
そしていつしか、部長の目指す看護っていうのを私に伝えてくれるようになりました。
なんとか頑張って導入した当時の電子カルテの足りないところ。そして僕ら看護師さんに成り代わってが目指さなければならない理想のスタイル。それを教えてくれました。
話はとても単純なんだけど、僕の全部を見てきてくれていた部長の言葉。当時は理詰めで受け取っていたから部長の言いかったことの半分ぐらいしか当時はわからなかった。
でも、今はちゃんと理解できていると思う。

  • 指示を実施するだけが看護師じゃない
  • 記録を書くだけが看護師じゃない
  • 看護支援システムに使われるのは本末転倒

 
そして、それらが意味するところは

  • 患者さまを看るのが看護師
  • 記録を書く時間があるならベッドサイドで寄り添いなさい

 
ということなのだと私は理解しています。それをシステムでどう実現するかが私の命題であり、それを教えてくれたのが看護部長でした。
電子カルテ看護必要度から看護師の忙しさを定量化し、見える化(可視化)しようという研究を始めたのも、部長の理解あってのものだったし、電子カルテ更新で私が心を病んでしまって療養休暇に入らざるを得なかったとき、できればだれにも会いたくないときに、それでも会いに行ったのは看護部長でした。
だからすごく「心の支えを失ってしまった」っていう思いがあり、今日は悲しい1日でした。

週が開けたら、部長が居ない看護部が始まります。
救われるのは、部長のEssenceを受け継いでくれている副部長が昇格すること。
部長の教えを、新しい看護部長と一緒に受け継いでいきたいと思います。