今年を振り返る

たぶん、今年竿後のエントリーです。
多くのことは電子カルテ更新を振り返ってのエントリで書いてしまったので、取り立てて書くべきことは今後の課題だと思います。
今後の課題はただ一点に尽きます。それは「医師に優しくない電子カルテの改善」です。
当院が導入した超最新型の電子カルテは、医師以外の職種については十分に及第点を超えています。前から言っていますが看護はピカイチです。
しかしながら、看護オーダーを除くほとんどの指示を出してカルテを記載する義務がある医師に対する操作性の悪さは特筆すべきです。

 
これらが極端に悪いのです。
電子カルテ担当師長の病棟に着任したある新任医師に当院の電子カルテの使い勝手について師長さんが聞いたんだそうです。
そしたら「最初は慣れないせいかと思っていたけど、やっぱり使いにくいよね」と言われたそうです。
これが全てだと私は思っています。
大学病院や他の病院で電子カルテを使っていた医師が「なんとなく使える」ようにならないと箸にも棒にもかからない。
全ての医療者は患者さまに対して医療を提供するために存在し、その記録を診療録及び診療諸記録を記載する義務がある。ICT時代になってカルテが電子化されたとしても、入力の義務はありますが使い方を覚える義務はないのです。
よく「紙カルテをめくるようなイメージで・・・」と医師から要望されますが、実際にめくる感覚はあまり重要ではなくて検索性と閲覧性が必要であり、その上のレイヤー(層)にDoに代表される電子カルテならではの機能が存在し、さらには同じレイヤーに新規のオーダーを簡便に発行するセットなどの機能があると私は考えています。
今問題なのは下のレイヤーである検索・閲覧性が非常に悪いということ。要はベースの部分がしっかりしていないのです。
例えば、今年の11月1日から14日までの医師の記載を検索したとします。しかし、見当たりません。「おっと、10月の記載かも」と過去に遡りたいとします。ところが見渡す限り画面上に「過去に遡るボタンがねぇぇぇぇ!」って。仕方なしに検索条件で期間設定し直そうとすると「さっきの検索条件消えてるぅぅぅぅ!」となって「\(^o^)/オワタ」。
この程度のケチが山のようにある。
耳を疑いたくなるような機能も。「レジメンのDoが出来るようになりましたー」て言われたから出来たのかと思うじゃないですかぁ、そしたら「出来たんですけどね・・・」と続く。例えばFull Doseで出ていたレジメンをDoして80% Doseにしたとします。この80% DoseレジメンをDoしてもFull Doseになっちゃうんです(∀`*ゞ)テヘッって。そんなの使えるかーバカタレー!それは「出来た」とは言わない。(笑)
先に挙げたカルテ記事の検索って最低条件がクリックで遡れること、でも例えばFirefoxChromeのアドオンにあるAutoapagerの様に記事の末尾が表示されたらそれを判別してどんどん先読みしてくれるようにならないと先進的とは言えないんですよね。でもそんな絵空事を語りより、基本部分をなんとかしないと。
 
この部分の対策として主に電子カルテ更新プロジェクトメンバーだった医師を中心に医師を選抜して開発部門と定期的なディスカッションを行っています。
イチ病院に開発が出向いてくれる、開発の顔が見れる電子カルテというのは非常に希有なベンダーだと思いますが、その場で出てくる医師の要望は「そんなの言わなくても当然考慮されているべきだろ」と思うものが大半です。医師が「いちいち指摘するのも馬鹿らしいけどさー」というのも仕方ないレベル。
願わくば「他ベンダーを出し抜く」アイディアが提案され、それについてディスカッションされるべき場であって欲しいのですが、現状を鑑みるとそれは高嶺の花です。
兎角、医師は自分の病院の電子カルテはボロクソに言う人種ですが(偏見でごめんなさい)、それを差し引いてもやっぱり「医師に優しくない」のです。ユーザーフレンドリーという言葉がありますが、FriendryじゃなくてTerrible。
 
今年最後のエントリーにこのテーマで書かざるを得なかったのは、プロジェクトメンバーの医師がポロッと「責任を感じている」と私に漏らしたからです。
その医師は生粋のマカーで(というかウチの病院のプロジェクトメンバーには私を含めマカーが多いのは不思議)、「PCの操作性はこうあるべき」とか持論があって、様々な意見をくれる。批判ばかりしているのではなく建設的な意見をくれるし、電子カルテ更新に際しても忙しい合間を縫って積極的にワーキンググループに参加してくれた非常に大事な医師です。
その医師が漏らした一言。これは大きなものです。そのような思いを臨床の医師に抱かせるシステムであってはならない。
そう思い、このエントリーで私なりに痛烈に批判します。
どうかこれを読んでくれているベンダーの中の人。お願いだからもっと考えて改善してください。美しいソスコードでなくて構わないから(というか多分コーディングは外注でしょ)、美しい機能をしっかりした機能設計書を書いてください。
リソースが足らないのは言い訳にならない。いつかリソースを割いてしっかりした電子カルテを作らなければ新規顧客獲得できずジリ貧の悪循環に陥ってしまいます。
今が勝負どころです。頑張ってください。
 
追伸:
本年も拙blogをご愛顧頂きましてありがとうございました。
前代未聞の電子カルテ更新を経験し、病気を患い療養休暇を取らざるを得ないまでに追い込まれた私の人生で忘れられない年になってしまいましたが、私の経験と意見がみなさんの参考になれば幸いです。
そして、ワークライフバランスって言葉もあるけど、別々に考えてバランスとるよりも自分のQOL(Quality Of Life)が一番大事だなって。
結局、仕事もLifeの一部であって、自分のLife全体でQOLが向上しないといけないなって思った一年でした。

それでは、みなさまにとって新しい年が良い年でありますよう願っております。

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