原発停止と節電に物申す。

先日、菅総理大臣から浜岡原子力発電所の停止要請と、それに対する中部電力の要請受け入れのニュースが流れましたね。
これについて「無計画だ」とか「他の原発はどうするんだ」などの批判があるようですが、私は率直に評価したいと思います。
これをきっかけに、脱原発自然エネルギーの活用の方向に日本が進んで行けば良いと思います。
自民党もここは評価してあげてもいいと思います。何でもかんでも反対では野党時代の民主党と一緒じゃないですか。
 
ただし、この停止要請には重大な問題があります。
それは防潮堤が出来上がるまでの期限付きであるという1点に尽きます。
原発の海側にある砂丘(高さ10メートル程度)を乗り越えた津波を防止する堤防が出来上がるまで(およそ2年)は停止しなさいよ。という事です。
何が問題かという前に、中部電力の対応についておさらいしましょう。中電の対応は以下です。

  1. 津波対策として防潮堤を新たに建設する
  2. 非常時の電源としてタービン建家上部に非常用発電施設を設ける
  3. 更に発電所裏の高台にも非常用発電施設を設ける

この対応の主眼は津波対策に置かれていることは明白です。
「福島第一は津波でやられたから、津波が入ってこないように、もし入ってきても電源を損失しないように高いところに持って行こう」ということです。
この対策がさも万全であるかのようにメディアは騒いでいます。
しかし、福島第一原子力発電所の電源損失は津波によるものではありません。津波が到着する前に既に電源が失われていたのです。そして、その後に津波が到着し、関連施設を根こそぎ薙ぎ払ったのです。
ということは、どんな高台に持って行っても、地震の揺れで電源が失われることを意味します。
更に、浜岡原発阪神淡路大震災規模の地震に耐えられる設計になっていないことも重要な問題です。阪神淡路大震災の際に記録された800ガルは想定を越えているのです。想定はたしか600ガル程度だったと記憶しています。
ということは、阪神淡路大震災クラスの地震が直撃したら、「電源が失われ、圧力容器や貯蔵プールの冷却ができなくなる」とともに「原発建家自体の損傷」の2つのリスク要因があるのです。
懸命な方ならもうお分かりでしょう。防潮堤など抜本的な対策にならないのです
この事実を多くの皆さんに知って頂きたい。
 
話は変わり、それ以降のネット上の記事やTwitterのツイートを見ていると、「家庭でも節電しよう」という論調のものが多いのも気がかりです。
もちろん節電することを非難するつもりはありませんが、僕は家庭で節電するつもりは毛頭ありません。
その理由は、夏のピーク時において、家庭での消費と企業での消費の割合はおよそ1:9であり、ほとんどが企業や工場での電力消費が占めている点です。全国数多の一般家庭が束になって節電したとしても焼け石に水です。そもそも夏の昼間に家に居るのは主婦やNEETぐらいで(笑)大体の家庭が蛻の殻でしょ。
だから、企業に的を絞って、夏期の2時から3時に節電させれば良いのです。下手に家庭で節電させて「なんちゃって節電厨」が増えて、職場での意識が薄れてしまうほうが問題です。企業で1割節電出来れば、全国の一般家庭全てに匹敵する効果があるのですから。
しかしここに落とし穴があります。
まず、電力料金についておさらいしましょう。
一般家庭は「基本料金+従量料金(+燃料費調整単価)」という大きく2つの柱があり、基本料金はさほど高くないが従量料金が高い料金体系になっています。
対する企業は一般家庭と同じように「基本料金(特別高圧電力など)+従量料金(+燃料調整単価)」に力率(大型コンデンサを用いて交流電流の位相を調節しし、効率よく電力を使用するための仕組みで、力率はその値)を加味して計算されます。ここで力率の説明は省くとして、問題になるのが基本料金と従量料金の割合が一般家庭と大きく異なるのです。
大口受給者たる企業は年間の一時間あたりのMAXの消費電力量によって基本料金を支払います。MAXの電力量をデマンドと呼ぶのですが、デマンドを超えると従量料金が高くなるため、デマンドの見極めは非常に重要です。更に一般家庭と根本的に違うのが、デマンド料金(基本料金)がべらぼうに高く、従量料金が安いという料金体系になっていることです。
基本料金が高いため、電気を多く使ったほうが1kwhあたりの単価が安くなるということであり、使えば使うほど得をする(実際の支払料金は上がりますが・・・)のです。精錬工場などでは大量の電力を消費しますから、たくさん使ったほうがコストが安く製品を作れるのです。もちろん夏期は「夏期料金」という特別に高い従量料金になりますが、本質的なところは上述の通りです。
これを踏まえると企業の担当者はこう考えます。「デマンドまでは目一杯電力使え、ただしデマンドは超えるな」。果たしてこれで節電などできるでしょうか?
私は疑問に思います。
電力会社も企業も「夏期の2時から3時のピーク時に目標を定めて、供給能力を確保し、デマンド契約を行う」という仕組みから脱却しないといつまで経っても「夏の電力不足が・・・」「家庭でも節電しよう・・・」といった論調の記事が後を絶たないでしょう。
田中優さん曰く「企業も基本料金を安くし、従量料金を上げる料金体系にすればすぐに何%かは減るよ」とおっしゃっています。
これが本質なのです。
そして、このからくりを知っていると、経団連のお偉方の脱原発への反対姿勢もつ面白く拝見することが出来るのです。
 
今日は、浜岡原発の問題点と、節電に対する根本的な間違いを指摘してみました。