親友へ

今日、ひげめがね(愛称)は病院を去りましたね。
ひげと初めて会ったとき僕は茶髪、ひげは当時から老けていてヒゲも濃かったな。お互いに「コイツとは絶対に気が合わない」と直感的に悟らせるほどの第1印象の悪さだったのに、今や大の親友になってしまったな。
確かひげとは実は一緒に仕事したことないんだよな。一緒に仕事してないのに、なぜか夜な夜な「病院をどうするべきか」「この先の臨床に何が必要か」を語り明かしたな。もちろん僕たちは医療者じゃないから僕たちに出来ることは限られていた。限られていたからこそ全体を俯瞰することができたのかもしれないな。「忙しさは悪だ」の名言も生まれたな。思えばあれから2年か。時の経つのは早いな。
何も起こらない、何も変わらない、だけど激動の2年だったな。
ひげが「(病院を)辞めることにした」って聞いたとき、本当にショックだった。でも何も言えなかったよ。数年前、新宿歌舞伎町2丁目でひげが転職を考えてるって吐露したとき、僕は泣いて止めた。でも、そのことがひげの人生を狂わせてしまったのではないかと悔やむこともあったんだ。
だから今回は何も言えなかった。
でもさ、本当に淋しかったよ。僕は自分勝手な人間だから自分の大事な人にそばにいて欲しいんだ。ひげの気持ちなんて忖度したくないんだ。一緒に仕事しようよ。俺たちには活かしてやるべき有能な元球児もいるじゃないか。なのに居なくなるなんて嫌だよ。2人の思いを職場や社会に活かすことができなくてもいいよ。お互い支え合って、理想を語ろうよ。いいじゃんそれで。って思っちゃうんだ。
そんな俺だから、ひげがいなくなるのが悲しくて悲しくて今日はたくさん泣いたよ。眼が痛いよもう。
だけど僕は今感じていることが一つあって、最後の別れの握手の時、ひげがここ数年間見せたことの無いような笑顔で笑っていて、僕の中で少しだけれど何か吹っ切れた感じがしているよ。
 
ひげは日記で羽生善治VS佐藤康光の目隠し将棋に例えて「僕らはシンクロしている」と書いたけど、確かに良くも悪くもシンクロしていると僕も思うよ。良くも悪くもな。(笑)
今まで20メートルぐらい離れていた距離が100kmに延びるだけで、心の深い部分では何も変わらないんだと思いたいな。
僕はベッドサイドに近いこの場所でもう少し頑張ってみる。ひげは新しい場所で医療を俯瞰して今まで得ることの出来なかった経験を積んで欲しい。
さしずめ踊る大捜査線で言うと僕が青島(織田裕二)でひげが室井さん(柳葉敏郎)だな。
ひげはドラゴンボールの「フュージョン」を知っているかな。2人が融合してめちゃめちゃ強い戦士になるんだ。悟天とトランクスがフージョンするんだけど、精神と時の部屋で修行積んでスーパーサイヤ人の状態でフュージョン出来るようになる話があってな。次にひげと会う時にはお互いにスーパーサイヤ人の状態で会おう。そしたらまたフュージョンしようぜ。
シンクロしてるんだから、いつでもフュージョン可能だぜ俺たち。
 
ひげが居なくなってしまって、僕らが思い描いていた電子カルテを作れるかどうか分からないけど、成功したら褒めてくれ。失敗したら笑ってくれ。ひげと語り合ったことを胸に頑張るよ。
ひげがこの先成功することを願っているけど、失敗したら笑ってやるから君は君の思うようにやればいい。女にはモテないだとうけど、男には絶大にモテるんだから、男の多い職場であることを願ってやまない。
できればお金をたくさん稼いで是非フェラーリを買ってくれ。もちろんコーナーストーンズでキャッシュでだぞ。328なら500万らしいからな。そしたら乗せてくれな。それまでは美味いIPAが飲める地ビール屋探しに励んでくれ。
 

逢うて別れて 別れて逢うて
泣くも笑うもあとやさき
末は野の風 秋の風
 一期一会の 別れかな

 
親友よ、また会おう。
 
追伸:ひげのお母さんから頂いた手紙は読む覚悟を決めるのに3日。覚悟を決めて読んだのが1回だけだよ。泣いてしまうから迂闊に読めないよ。今はimacの前に大して大事にすることなく置いてあります。いつか「あぁ、あの手紙どこかへ行っちゃったな」と自然に忘れられる日が来るまで大事にしないように大事に取っておきます。