看護必要度2018年度版シミュレーションしました

さて、だいぶご無沙汰しているこのBlogですが、看護というより今は富士通の新型電子カルテ「LifeMark-HX」ネタで訪れる方が多いようですね。

 

そんなことは無視して、看護ネタです。
一昨日の2018年1月24日に中医協の総会で2018年度の診療報酬改訂における個別項目ごとの具体的な改定内容(いわゆる「短冊」)が出ましたね。
皆様のおかれている環境に応じて、いろいろな感想があるかと思います。
ワタシは真っ先に看護必要度が気になっちゃうわけです。中医協の入院分科会の資料・議事録はウォッチしていますが、議事録のアップがどうにも遅いので、議論の進みが分からないんですよね。早くアップしてくれないかなぁ厚生労働省

看護必要度については、評価項目は変わらず、施設基準に関する部分のみのちょっとだけの変更でしたね。
具体的には

モニタリング及び処置等に係る得点(A項目)が1点以上、患者の状態に係る得点(B項目)が3点以上で、かつ「B14 診療・療養上の指示が通じる」又は「B15 危険行動」のいずれかに該当

が新たに追加されました。


2016年度の改定で認知症やせん妄の評価がなされるようになりましたが、今回の改定で更に強化された感じですね。
今のご時世ですから、「認知症を患っている急性期患者」はいくら急性期病院であっても避けては通れないし、病棟で「手間のかかる患者」という意味で現場の大きな負担になっていることは否定できないですよね。
なので、この部分に関しての方向性としては「良い改定」だと思います。あくまで、この部分だけですが・・・。

 

で、次に気になるのは現行の施設基準である25%がどこまで引き上げられるのかという点です。
中医協の入院分科会の資料では、「B14 診療・療養上の指示が通じる」と「B15 危険行動」の患者は個別で見ると10~15%居ることが明らかとなっていますが、ではこの改定の条件を満たす患者がどの程度居るのかという数字は提示されていません(たぶん)。
しかし、短冊の内容を見ると25%という数字が無くなっています。これはやはり「引き上げ」を見越した短冊なのだろうと見ざるを得ませんが、如何せん分科会で数字が出てきていないので、どのぐらい引き上げられるのか推察出来ません。

 

今やれるのは、新基準に置き換わった場合に自分の病院で「どのぐらいのパーセンテージが見込めるのか」という点を明らかにしておくことぐらいだと思います。

 

そんな訳で、2年ごとの恒例となりました「看護必要度の改定シミュレーション」です。

 

結果から言っちゃいます。うちの病院では4.22%ほど基準を満たす患者が増加しそうです。仮に基準が30%に引き上げられたとしても、なんとか7対1は守れそうです。35%ならアウトです。
傾向としては、「神経内科」「脳神経外科」の伸びが大きいですね。両科とも「B14 診療・療養上の指示が通じる」を満たす患者が多いことは容易に想像出来ます。
神経内科の伸びが大きいということは、2016年度改定で評価したはずだった認知症・せん妄について、2018年度改定で更に評価できるようになったという方向性の裏付けでもあります。
2016年度改定といえば、「C項目(手術等の医学的状況)」が追加され、術後の評価を行うようになりましたが、今回はどちらかというと「内科系の患者の認知症患者の評価が出来るようになった」といったところでしょうか。
その訳は、先に述べた「神経内科」「脳神経外科」に次いで、「呼吸器内科」「循環器内科」「内分泌・代謝内科」の3科の伸びが大きくなる結果となった事に寄ります。逆に言えば「内科系以外は伸びが無い」ということの表れでもあります。ホンマに外科系は評価基準の改定の影響受けへんわ。まぁ狙い通りなのでしょうけれども・・・。

というわけでまとめると

  • 認知症・せん妄患者がきちんと評価される方向性のようだ
  • 実際、内科系の認知症・せん妄患者もちゃんと評価される結果だった
  • あとは施設基準が何%に引き上げられるか注目だ

といった感じです。

みなさんの病院ではどのようになるかドキドキですね。では。(^_^)/~

 

追伸:はてなダイアリーからはてなブログに移転しました。

博士号取得しました!(つづき)

博士課程に入学して三年。はじめの2年間は月に2回、東京まで新幹線で通う日々を過ごしました。
スケジュールとしては、1年目に副論文1本、2年目で博士論文用のデータ収集と分析、3年目で博士論文執筆というのがゴールデン・スタンダード。だれもそんなスケジュールどおり行かないんですけどね。(笑)
それでも、1年目で副論文を書き上げて投稿するというところまでは比較的順調に行きました。無事に学会誌に原著論文として採用されましたし。
 
でも、2年目特にデータ解析を始めてからは苦難の連続でした。本当に毎日が辛かった。寝ても覚めても研究のことを考えていた日々だったと思います。
なにが辛かったって、博士論文に値する研究として成り立たせるかってこと。
昨日のエントリーに書いた看護の赤字要因なんて、全く博士論文として不十分なんですよ。それは「独自性」が無いこと。だれでも考えつきそうなことをやっていてはダメなんです。
なので、如何に「独自性」と「新規性」を盛り込むかってところで、全く良いアイディアが浮かばなかったんです。それを見つけ出す為に毎日毎日データの山を掘りあさり、キラリと光る石を探すという途方も無い作業を半年以上続けたでしょうか・・・。
「暗く長い先の見えないトンネル」と先人は言いますが、まさにそのとおりだなぁと痛切に感じていました。
 
やっとこさひねり出したアイディアが、看護量とPDPS点数の比率(赤字率)を度数分布化して、その面積の期待値を評価するという数式モデル。
「本当にこれで大丈夫かな?博士号取れるかな?」と不安でしたが、これ以上この研究を深めることは当時の私には出来ませんでした。「ダメなら(博士号)諦める」「人事を尽くして天命を待つ」という悟りの境地に達していました。
 
ストレスで食事が喉を通らない日々が続き、酒ばっかり飲んでいたら健康診断で肝機能が急激に悪化し、現在治療中。(笑)
本当に精神的にやられた日々でしたが、学位記授与式(卒業式)では謝辞を述べる修了生総代として選出いただいたり、他の研究室の教授から「キミ、優秀だね」とお言葉頂いたりで有終の美は飾れたかなと思っています。
 
今は「何も考えなくていい毎日」というものを謳歌しています。なんて幸せなんだろう。(笑)
しばらくはゆっくりしたいところですが、もう次のシステム更新が間近に迫っており、現在入札中。どうなることやら。

博士号取得しました!

約一年ぶりのエントリーになります。
まだ見てくれている人いるのかな?(笑)
 
さて、私こと江頭(仮名)、この度無事に博士号を取得しました。
なんの博士か書いちゃうと身バレするので内緒ですが・・・。
 
何を研究したかっていうと、今の診療報酬制度では、看護師さんの労働って出来高なら入院基本料で定額、DPCなら機能評価係数?で定率なんですよね。
DPCに着目すると、機能評価係数1を乗ずるPDPS点数って、基本的に検査料や投薬料などの出来高がベースになっているのですが、それって看護と全く相関しないんですよね。(事実、検定しましたが、全く相関しないという結果でした)
てことは、今のDPC/PDPS点数×機能評価係数1で看護を評価するってのは明らかに間違っていると言わざるを得ないわけです。ここが現行制度の問題点なわけです。
じゃぁ、機能評価係数1で定率評価ではなく、機能評価係数2のように施設間で変動する係数を設定する必要があるのではないか、そのためには看護量を計る指標が必要だよね。じゃぁ、その指標を作ろう!というのが私の研究の出発点であり、ゴールでした。
ベースは筒井孝子さんが開発した患者分類法2を用いて看護を定量化し、DPC/PDPS点数に対する比率の度数分布を面積として評価し、そこから得られる期待値を指標とする数学的モデルを考えました。
まぁ、ここで詳しく書いても仕方がないので割愛しますが、その分析の課程でいろんなことが分かりました。
まず、看護量が赤字になる患者さんとはどのような患者像なのか。
一つは「死亡退院」。死亡退院の際には救命的に医学的処置も多く、ADLも低下するためケア量も多くなる。結果的に赤字。DPCコードでは死亡による分岐は考慮されていないので、当然の結果かと思います。(「死亡退院だったら点数上げる」ってのはモラル・ハザードが怖いしね)
次に「全身麻酔」。全麻の術後も死亡退院と同じく、疼痛管理などの医学的処置とADL低下が同時発生するからですね。「手術は出来高算定やん」という意見もあるかと思いますが、出来高算定部分て主に手術室の手技料など手術室内で行われる医療処置が出来高算定なだけで、帰室してからは包括対象になっちゃうんですよね。加えて言うとDPCの樹形図に「手術」による分岐がありますが、こと看護の側面から見ると「麻酔法」による分岐があるとありがたいんです。術後のケア量にだいぶ違いが発生しますから。
そして3つ目。「(がんの)Stage」。とりわけStage0から2までの早期がん。これはまぁ、早期がんは外科的手術が選択される場合が多く、Stageが進むに連れて化学療法や放射線治療などの低侵襲性治療に移行していくからと思われます。重回帰分析したとこと、「麻酔法」との相関性はありませんでしたが、なにかしらの因果関係が推察されます。
これらに当てはまる患者さんは、語弊を恐れずに言うならばケアの持ち出しの患者さんと言えるのではないでしょうか。
 
そんなような研究をずっとやっていました。

(つづく)

看護必要度2016年度改定シミュレーションしました-その後

前回のエントリーで、2016年度改定に向けた看護必要度のシミュレーションの結果、当院は20%ぐらいにしかならないと書きました。
http://d.hatena.ne.jp/double2you/20160119/p1
 
納得できないのでSPSSを引っ張り出してきて、統計的に検証した結果22%ぐらいは確保できているはずという結論になり、データとロジックの再検証を行いました。
結果、「A得点3点以上」のフラグを立て忘れてました。(∀`*ゞ)テヘッ
なんというケアレスミス。(笑)
そこは今回の改定のキモだろwアホかお前はwというツッコミは甘んじて受けます。すみません。
 
前回のエントリーを見て、直接問い合わせて頂いた皆様、大変お騒がせ致しました。
当院は昨年1年間実績ベースで25.6%でございます。これで看護部も安心するでしょう。看護部長に説明する前に気がついてよかったー。
 
さて、再検証データの分析を行っているところですが、外科系、特に呼吸器外科・消化器外科・泌尿器科・婦人科・口腔外科の伸びが半端ないです。ほぼ倍増で、呼吸器外科に至っては50%を超えてるwww
M項目(全麻の術後)のインパクトは相当なものがありますね。今回のシミュレーションでは一般全麻の3日で行いましたが、当院は鏡視下手術が多いのでこの数値よりももっと増えるのは確実です。
他方、整形外科の伸びはイマイチです。M項目に骨の観血的手術がありますが、全身麻酔に限定されていることが影響していると推察します。
また、脳神経外科はほぼ横ばいです。当院はSCUがあるので、脳外科の術後に一般病棟に戻ることが殆ど無いので、これは道理でしょう。
 
しかしまぁ、腎臓内科・呼吸器内科・消化器内科といった内科系は15%で頭打ち状態です。
他の診療科が稼いでくれるので病院全体では基準を満たしそうですが、病棟別に見ると、前述した呼吸器外科・消化器外科・泌尿器科・婦人科病棟以外は基準に達しません。
病棟単位での施設基準が強制されるようになると内科系病棟は対策が必要と思われます。
 
が、今日の所は、議論されているMaxの基準であろう25%をクリア出来そうで一安心しました。

看護必要度2016年度改定シミュレーションしました

さて、年度末の中医協の中間とりまとめを踏まえ、2016年春の診療報酬改定に向けた施設基準、とりわけ一般病棟用の重症度、医療・看護必要度界隈が慌ただしくなってきましたね。
大きくは

  • M項目の新設(全麻の術後なら問答無用で基準を満たす)
  • 認知症・せん妄の評価
  • 救急入院の評価

 
といった所なのは説明する必要は無いでしょう。
 
今後注目されるのは、看護必要度の施設基準が何%になるかですね。
厚生労働省は25%と言っていますが、日病や全自病の偉い人から強い反発が出ています。
個人的には20か23%のどちらかになるのではないかと踏んでいます。あえて言うなら23%だと思ってます。
 
そんなこんなで、私のお仕事としては、新基準になった場合のシミュレーションです。もう、改定前の恒例になりつつあります。勘弁して欲しいです。
年が明け、3日ぐらいかけてロジックを作っていました。
2015年1年間の全患者データに対し、救急受診・手術(麻酔法)を結合して、新設のB項目を足しこんでってな具合です。
当院は病棟種別を問わず看護必要度全項目をチェックしているので、ハイケア評価にある「危険行動」「指示が通じる」のデータがある点が良いですね。
 
ま、そんな訳でシミュレーションしてみたんですが、なんと現行基準(2014年度基準)から4%ほどしか上昇しない結果となってしまいました。
要は20%ぐらいってことですよ、奥さん。
25%なんて夢のまた夢の状況じゃないですか、奥さん。
M項目の新設にともなって外科系は非常に良い数値なんですが、内科系がとにかく低値なんですわ。
このシミュレーションから抜けているのは以下ぐらいなもんです。

  • 無菌室治療
  • 開胸・開頭や腹腔鏡下かどうか分からないので一般の全麻(3日)で見ている

 
無菌室は当院は2床しか無いし、3日以上に該当する手術も20%という数値を大きく底上げするとは考えづらいです。
それを踏まえると、この数値が当院の実力ではないかと思うのです。
どうしましょう。困っちゃいました。
 
もし、対策するのであれば、以下の点でしょうか?。
2016年度基準で、B得点が3点未満でA得点が2点の患者が全体の1割程度存在していることが分析結果から分かっています。
この患者のA得点を1点引き上げる努力をすれば20%という数値は大きく改善するはずです。
他方、B得点が3点以上でA得点が1点の患者さんも同じように全体の1割います。前者と合わせれば全体の2割の患者さんにあと1項目評価することが出来れば劇的に改善します。
しかし、しかしですよ、奥さん。
A項目は医療に関する評価項目です。むやみに上げるということは、すなわち過剰医療の提供です。言うまでもなくあってはならないことなのです。
実際問題、とりわけ低値である内科系でA項目をあと1点稼ぐのは至難の技です。専門的な治療・処置で2点の患者さんに「あと1点!」と求めても、評価できる項目無いですよね。もちろん、専門的な治療・処置の無い患者さんに不要な治療を施すことも出来ませんよね。
ということは、2014年度改定の際のように「(術後は)心電図モニターの装着」のような力技で稼ぐことはかなり厳しい状況であると言わざるを得ません。
 
というわけで、手詰まり感のある診療報酬改定に向けた看護必要度シミュレーションの中間報告でした。

■後日談がありますので、ぜひお読み下さい。
看護必要度2016年度改定シミュレーションしました-その後

富士通LifeMark-HX見てきました

富士通のLifeMark-HXの実物を見てきましたよー。
あのですね、Web型ということでなめてました。すみません。
ブラウザで、EGMAIN-GXとほぼ同じUIを実現してますね。とはいえ、どうしてもブラウザでは超えられない壁は存在するのも確かですが、目を瞑れる範囲なのではないでしょうか。
技術的にはHTML5ではなく、某MS社の銀のやつ(シャア専用の赤いモビルスーツとは関係ありません)がベースですね。
この銀のやつが将来的にキラーテクノロジーになってしまうのではないかと心配するところですが、これは杞憂に終わりました。(詳細は言えませんが)
 
上から目線でいうと、「やっと富士通も本気で『あるべき姿』に移行する方向に舵を切ったな」という印象です。
 
次の電子カルテの更新の際にはSOA基盤の構築を目指していますが、現行ベンダーの電子カルテだけでなくLifeMark-HXとの組み合わせも可能と思われます。
 
最後に、BIツールが付いてくるのも売りのひとつらしいけど、BIツールだけじゃ使える範囲ってすっごい狭いぜ。良い子のみんなは期待しちゃダメだよ。

電子カルテ関連のエントリーまとめはこちらから
電子カルテベンダー乗り換え、データ移行の実際(当院の場合)はこちら
電子カルテバージョンアップにおける病院側の受け入れ体制についてはこちら

富士通LifeMark-HX

モダンホスピタルショウの開催に合わせて富士通が新型電子カルテを発表しましたね。
http://www.fujitsu.com/jp/solutions/industry/healthcare/products/lifemarkhx/index.html
それにしても、Web型とは想像の斜め上。見た目は従来のEGMAINを踏襲していますが・・・。
http://www.fujitsu.com/jp/Images/01_b_tcm102-1830961.jpg
 
率直には「大規模病院でWeb型は無いだろ」と思うわけです。
Web型の弱点はユーザビリティ(操作性)の低下です。
数年前にもWeb型を発表した同社ですが、いまではほとんど聞かれなくなりましたね。
理由は上記にあるんだと思います。
 
ただ、そこは天下の富士通です。
従来のクラサバにhttpd載せて、UIはHTML5を採用してなんてことを期待しちゃいますが、どうやらWeb一本のようです。んー。
今日、これからモダンホスピタルショウに行って実物見てきます。
 
余談ですが、数年前のモダンホスピタルショウに合わせて新製品を発表したNECはその後どうなってるんでしょう。(笑)